La Movado 1998年1月号掲載
ひきつづき'98年も作文教室を担当することになりました。 新年号なのに12月ネタで申し訳ありませんが, また一年間よろしくお願いします。
まず, このような場合にはtagoにlaをつけるのが原則です。
普通名詞であるはずのtagoを用いて
「本の日」という固有名詞的なことを言っているからです。
[訳例1]
La 15-a de decembro estas la tago de libro.
定冠詞laは「あなたも知ってるあれですよ」ということを 伝えるための語で, これは ある意味で固有名詞化に近いと言えます。 たとえば ``Atendu min ^ce la kafejo''(喫茶店で待っていなさい)という場合の la kafejoは, 話の通じている人にとっては ほとんど固有名詞みたいなものですね (97年5月号の例も参照)。
「本の日」を「固有名詞みたいなもの」ではなく
完全に固有名詞として扱う(したがって大文字で書く)場合には
laを省略することもできます。
[訳例2]
La 15-a de decembro estas Tago de Libro.
人によっては la tago de la libro のように libroにもlaをつけるほうが いいと言うかもしれません。 これはどちらでもいいです。 (理由を説明すると長くなるので またいつかということにしましょう。)
それから, この例での「12月15日は」の扱いに注意。
これは
[12月15日] = [本の日]
ということで, 「12月15日」が 動詞 estas の主語になっています。
ついでながら la 15-a を数字ぬきで書く場合は la dek-kvina と綴るのが
ふつうです。
これは
[12月22日] = [食べます]
という文ではありません。
前の例とは「〜は」の扱いが違うのです。
日本語の「〜は」という助詞は「〜も」や「〜さえ」と同じ仲間であって,
主語かどうかには関係がありません
(例: 彼はイカを食べる,
私もイカを食べる[主語],
彼女はタコも食べる[目的語] ktp.)。
[訳例3]
En la 22-a de decembro oni man^gas kukurbon en ^ci tiu regiono.
ここで en la 22-a de decembro は「12月22日には」という意味で, つまり主語ではなく副詞句である, と 見抜くことが大切です。
エスペラント文の大原則として, ひとつの文には必ずひとつ 「述語動詞」 (-as, -isなど)がなければならないことに 注意しましょう。 ここでは man^gas が それに相当します。 この述語動詞(man^gas)に 主語(oni)や目的語(kukurbon)や 副詞句(「12月22日に」「この地方では」)がくっついて 文になるわけです。
なお en ^ci tiu regiono は前置詞による副詞句ですが, 一語にまとめて ^ci-regione と言うこともできます。
「こわす→こわれる」のように 他動詞を自動詞にしたいことがあり, こういうときには rompi → rompi^gi のように -i^g- という接尾辞を使います。 このような自動詞化(「こわれる」)は 受動態(「こわされる」)のニュアンスを半分だけもっているということから, 文法ではこれを 「中動態」と呼ぶことがあります。
さて, 例文の「売れる」は まさに vendi(売る)の中動態なのです。
[訳例4]
Hodia^u kukoj bone vendi^gas.
ついでながら hodia^u は名詞でなく そもそも副詞であることに注意してください。 したがって en hodia^u とは言いません (もったいぶって en la hodia^ua tago などと言うことは あるかもしれませんが)。
これは決まり文句ですね。
[訳例5]
Mi deziras al vi feli^can novjaron.
文字通り「よいお年を」の意味なのですが, おもしろいことに 新年になってからこう言うと 「あけましておめでとう」の意味になります。 おかげでこの号が届くのが12月であっても1月であっても 一応 意味は通るわけです(?)。
【今月の投稿者】
(数字は98年1月号からの投稿回数です。)
市原淑子,岩田好兼,大浦毅,岡山行幸,語学マニア,
知念輝彦,哲郎,山崎良文, Ambrozio, Bonkura,
Elementa, Kacu, Ma'ki, Nana, Sanae,
S.D., S.I. (1回)
【3月号の課題】(1月15日締切)
電子メールでも応募できます。 宛先:
ooshida@damp.tottori-u.ac.jp
なお必ずしもこちらから返信できるとは限りませんので、
添削を希望される場合は別途ご連絡くださいますようお願いします。