塑性コラボ
2014-10-25 更新
歯磨きの主成分は(ものにもよりますが)
たいていチョークの粉を水で練ったものと同じで、
こういうものをペーストといいます。
また、酢のなかに油滴を分散させて作るのがマヨネーズで、
こういう物質をエマルションと言います。
ペーストやエマルションには、
濃度が高い(水分が少ない)と固体状になる
という性質がありますが、
しかしガチガチに固くなるわけではなく、
ある程度の力を加えると流動化するという性質もあって、
これを「塑性(そせい)流動」と言います。
では固まっている状態と流動化している状態は何が違うのでしょうか?
私たちが取り組んでいるのは、究極的には、このような問題です。
しかも、歯磨き粉限定とかマヨネーズ限定とかいった個別論ではなく、
物理の観点から、なるべく一般的なことを知りたいのです。

練り歯磨き(自重を支えられる程度には「固体」的)
この問題は、見掛けほど簡単ではありません。
「流れるもの」と「流れないもの」といえば水と氷の関係が思い浮かぶのですが、
こちらははるか昔に解明されているのに対し、
ペーストのほうは未だ解明に至っていないからです。
もう少し詳しくいうと、水と氷の違いについては、
水では分子が乱雑に動いているのに氷では分子が結晶を組んでいるとか、
凝固点0℃という決まった温度があるとか、
そういったことが昔から分かっています。
ところがペーストやエマルションは、べつに結晶になっているわけではなく、
乱雑な状態のまま固まっていて、どうやら氷とは様子が違うようです。
液体が乱雑さを保ったまま固まる現象(ガラス化)については、
もちろん、過去にもさまざまな理論的研究がなされてきました。
しかし今までの理論のなかで最も有望と言われている理論でさえ、
固まる条件(濃度や温度)を計算してみると、
どうしても不正確な値が出てしまいます。
これはなぜなのか? どのようにしたらもっと良い理論を作れるのか?
この問題への答えを探して、
少しずつ専門の異なる5人の物理屋が知恵を出し合う
「塑性コラボ」を立ち上げました(さらに、
2012年から準メンバーが1名増えました)。
まだまだ力不足ですが、科研費(基盤(C)21540388および基盤(C)24540404)の支援により、
外部から講師を招いてセミナーをしたり、
それぞれの研究室を訪問したり、大学の宿舎で計算合宿(?)をしたりして、
新しい理論をめざして研究を進めています。

第9回コラボセミナーにて(2010年10月21日 岡山大学)
セミナー等の実施
第1期
- 第1回(2009年5月14日・15日)京都
- 研究打ち合わせ(非公開セミナー)
- 第2回(2009年7月2日・3日)京都
- 鄭誠虎氏セミナー
研究打ち合わせ
- 第3回(2009年10月28日・29日)日大船橋
- 中村真氏セミナー
非線形レオロジーセミナー(大信田・大槻)
ペーストの乾燥破壊における記憶効果のデモ実験
研究打ち合わせ
- 第4回(2009年11月20日・21日)鳥取
- 鳥取非線形研究会2009
研究打ち合わせ
- 第5回(2010年1月27日・28日)京都
- 狐崎創氏セミナー
研究打ち合わせ
- 第6回(2010年3月9日・10日)青山/筑波
- 研究打ち合わせ
コラボ報告(大信田)[外部講師:宮崎州正氏(筑波大)]
- 第7回(2010年6月6日・7日)青山
- 研究打ち合わせ
- 第8回(2010年8月8日・9日)相模原
- 研究打ち合わせ
- 第9回(2010年10月20日・21日)岡山
- セミナー「塑性流体の記憶効果と乾燥破壊の制御への応用」(中原)
研究打ち合わせ
- 第10回(2010年12月16日・17日)鳥取
- 鳥取非線形研究会2010
研究打ち合わせ
- 第11回(2011年1月26日・27日)京都
- 研究打ち合わせ
- 第12回
(2011年3月15日・16日)日大
- 日大塑性研究会 → 震災で延期(第14回参照)
- 第13回(2011年5月14日・15日)京都
- コラボ報告(松本)
有木健人氏セミナー
研究打ち合わせ
- 第12回/第14回(2011年6月15日・16日)日大船橋
- 日大塑性研究会
- 第15回(2011年8月9日・10日)岡山
- 荒木圭典氏セミナー
研究打ち合わせ
- 第16回(2011年11月23日・24日)鳥取
- 鳥取非線形研究会2011
研究打ち合わせ
- 第17回(2012年3月18日・19日)相模原
- 研究打ち合わせ
第2期
- 第18回(2012年4月25日・26日)青山/東大駒場
- 研究打ち合わせ
佐々研セミナー(大信田・松本)[ホスト:佐々真一氏(東大)]
- 第19回(2012年9月22日〜24日)大船渡市三陸町
- 三陸合宿
研究打ち合わせ・狐崎創氏セミナー
- 第20回(2012年10月29日・30日)鳥取
- 鳥取非線形研究会2012
- 第21回(2012年11月11日・12日)京都
- 研究打ち合わせ
コラボ報告(大信田)
川崎猛史氏セミナー
- 第22回(2012年12月25日〜27日)大阪/日大船橋
- セミナー(大信田@大阪大学11/25)
研究打ち合わせ(日大船橋)
- 第23回(2013年2月24日・25日)相模原
- 研究打ち合わせ
- 第24回(2013年6月1日・2日)日大船橋
- 研究打ち合わせ
- 第25回(2013年8月13日〜15日)大船渡市三陸町
- 三陸合宿
研究打ち合わせ・波多野恭弘氏セミナー
- 第26回(2013年12月8日・9日)鳥取
- 鳥取非線形研究会2013
- 第27回(2014年3月17日・18日)大阪
- 研究打ち合わせ
セミナー(大信田)※HAS-JSPSプロジェクト(湯川諭氏)と共催
- 第28回(2014年5月31日・6月1日)京都
- 研究打ち合わせ
池田昌司氏セミナー(非公開)
- 第29回(2014年9月15日〜17日)大船渡市三陸町
- 三陸合宿
研究打ち合わせ・中村壮伸氏セミナー
共著論文
- Ooshida T.,
S. Goto, T. Matsumoto,
A. Nakahara, & M. Otsuki:
Continuum Theory of Single-File Diffusion
in terms of Label Variable
J. Phys. Soc. Jpn. 80 (2011) 074007
- Ooshida T.,
S. Goto, T. Matsumoto,
A. Nakahara, & M. Otsuki:
An Approach to Glassy Systems
with Direct-Interaction Approximation
Prog. Theor. Phys. Supplement 195 (2012) 157-166
- Ooshida T. (大信田 丈志),
S. Goto (後藤 晋), T. Matsumoto (松本 剛),
A. Nakahara (中原 明生), & M. Otsuki (大槻 道夫):
Analytical calculation of four-point correlations
for a simple model of cages involving numerous particles
Phys. Rev. E 88 (2013) 062108
- T. Matsumoto (松本 剛),
M. Otsuki (大槻 道夫), Ooshida T. (大信田 丈志),
S. Goto (後藤 晋), & A. Nakahara (中原 明生):
Response function of turbulence
computed via fluctuation-response relation
of a Langevin system with vanishing noise
Phys. Rev. E 89 (2014) 061002(R)
学会講演など
※ここでは「コラボ」としての発表のみを記します(ソロ活動は対象外)。